本格的なワイン造りが体験できる!「足利学校」を運営するCfa Backyard Wineryのこだわりのワインとは

普段はなかなかお話することのできないお酒造りのプロにお会いして、お酒造りへの想いや物語をお聞きするワインワークス南青山×酒小町のインタビュー企画。
お酒好きでもなかなか知らないここだけのお話を、初心者でもわかりやすく、楽しめる文章でお届けしていきます。
今回は栃木県足利市のワイナリー、Cfa Backyard Wineryを親子で経営されている増子敬公さんと増子春香さんにお話を伺いました。
『Cfa Backyard Winery』は、ラムネなどを製造する60年続く清涼飲料水製造会社株式会社マルキョーの工場内に建てられた、“小さな小さな”醸造所です。
ラムネもワインも造る工場。そして、ワイン造りが体験できる足利学校まで
ーーはじめまして。酒小町の卯月、伊藤と申します。Cfa Backyard Wineryが、どんなワイナリーなのか教えてください。
春香さん(以下、敬称略):Cfa Backyard Wineryは栃木県足利市で60年続く、ラムネなどを製造する清涼飲料水製造会社株式会社マルキョーの工場内に建てられた小さな小さな醸造所です。
ーーもともとはラムネを製造していた工場ということですが、なぜワインも造ることになったのでしょうか?
敬公さん(以下、敬称略):ラムネは夏の飲み物なので梅雨明けから2,3か月が繁忙期ですごく忙して、1年の売上の7割くらいは繁忙期が占めているほど。会社を存続させていくためには、それ以外の収入源をつくらないとこの先厳しいのではと思ったんです。
そこで、ラムネ以外の事業もやろうということになったのですが、できることといえば、私が大学で勉強をしていた、ワインしかなかったんですよね。
春香:私たちは他のワイナリーさんみたいに、もともとワイン造りが夢だったというわけではないんです。
ーー夏のラムネ製造の季節が終われば、すぐにぶどうを使ってのワイン醸造と、お忙しそうです。さらにワイン造りを体験できる足利学校という講座も行っているとお伺いしましたが、どのようなことができるのでしょうか?
春香:体験と言うより、もっと厳しいかもしれません。作業的な部分は私たちがやるところもありますが、ぶどうの潰し方から、瓶のラベルデザインや売るところまでの頭を使うところは全部考えてもらいます。生徒さんにはいつも「このままだとワインにならないな、と思ったときだけ声をかけます」と指導しているくらいですからね。
ーー技術的なことから経営的なことまで学べるなんて、他ではなかなか体験できないことですね!
ワイン造り体験を始めるきっかけは、ひとりの女性の一言だった
ーー足利学校をはじめたきっかけは、なんだったのでしょうか?
春香:「ワインを造ってみたいんです」と、あるひとりの女性に言われたことがきっかけでした。他のところでは断られてしまったそうなんです。そこで父に相談したら面白いと承諾してくれて、私たちのワイナリーでやることになりました。
敬公:ワインを飲むことが好きな人は多いと思いますが、ワイン造りはいざやってみると大変なものです。それでもその女性はやりたいと言ってくれたので、本当にやると決まったらワイン造りがどんな仕事なのか、1年間徹底的に体験してもらおうと思ったんです。
春香:その方の周りにはワイン好きな方が多かったようで、41名も集まったんです。
ーー41名も!1クラス分ですね、もっと少人数かと思いました。
春香:私たちも、もっと少ない人数しか集まらないと思っていましたよ(笑)。でも、それがすごくうまくいって、2期も3期も70名集まってくださり、今年の4期もたくさんの方が参加してくださいました。 生徒さんは飲食店の方や、ワインの販売店の方、ワインを仕事にされている方が8割くらいで、ワインがすごく好きで趣味で来られている方が2割。もちろん、みなさんワインを製造したことがない方たちです。
ーーひとりの女性の一言で、ここまで大きな規模の講座になるなんてすごい…。そしてワインがお好きという思いだけでワイン造りにいらっしゃるなんて、かなり熱がある方たちばかりですね。
春香:はい。私たちも、愛好家の方がワインに何を求めているかということや、どんな想いで参加しているのかなどの学びがたくさんあります。例えば、造ったワインをいくらで売るかという考えは、みなさん違うので、2,000円という方もいれば、5,000円という方もいます。真剣に議論しすぎて「もう降りる!」とドロップアウトしてしまう人までいるんです。
ーーええ!辞めてしまう方もいらっしゃるんですね!
春香:そうなんです(笑)。みなさん本当に想いが強くて。ワインを気軽に飲んでもらえるように価格を抑えたいという方もいらっしゃれば、世界のワインの価格と並べるようにとあえて値段をあげる方もいます。どの方にもそれぞれの想いがあって。
ーー自分たちで造っているからこそ、思い入れが強くなるのでしょうね。
ワイン造りには、ユーモアが大事!
ーーワイン造りをされているお二人が、暮らしの中で大事にしていることはありますか?
春香:ユーモアを大事にしています。ワインを造っていると内向きになってしまいがちで。水に深く深く潜って溺れて、瓶詰めをしたときにようやく顔を出せるようなイメージです。ワインと向き合いすぎて思考を深めすぎ、精神的に辛くなってしまう時があるので、ユーモアな気持ちを大事にしていますね。妹も一緒に造っているのですが、彼女はいつも明るくて前向きな性格なので引っ張ってもらっています。
ロゼは合わせやすくておすすめ!気軽に飲んでほしい
ーーワインをあまり飲んだことのない女性でも飲みやすい、おすすめのワインはありますか?
春香:ロゼがおすすめです。香りは甘いですが、味はドライなので軽いお料理でも合わせやすいですね。例えば、赤ワインだと赤みのお肉など合わせるお料理が限られてしまいがちですが、ロゼだと全般的に合わせていただけると思います。
ーーなるほど、日本酒には食中酒という言葉がありますが、そういった飲み口がロゼなんですね。どういったシチュエーションで飲んでほしいですか?
春香:夕飯やちょっとしたパーティーなどで、気楽に飲んでいただくのが理想です。
敬公:ワインがメインではなく、食があってこそのワインということを忘れずにいたいですね。
ーーこんな素敵なパッケージのワインを気軽に食卓で楽しめたら、ライフスタイルにも変化が起きそうです。ラベルのデザインもとっても素敵ですが、なにかこだわりがあるのでしょうか?
春香:ラベルにもプリントしてあるロゴは“ラムネの泡”“発酵してる時の泡”“日の丸”`太陽”をイメージしてつくられています。
私たちのワインは製造本数が少ないので、ワインを飲む全ての人に飲んでもらえるわけではないですし、ましてや私たちのワイン造りへの思いを綴ったパンフレットをつくったとしても、読んでもらえる数は限られてしまいます。
なので、私たちのワインを手に取った人には最低限、私たちのワイン造りへの思いが届くように、ワインのラベル自体にワイナリーの情報を入れることにしました。
また、商品の撮影にもこだわっています。特別な機材を使っている訳ではないのですが、配置や構図まで試行錯誤して考えて、特に光の加減には気を使っています。いい写真が撮れるまで何度も何度も撮り直しして。人任せにはできないんですよ。
ーー可愛いロゴにはラムネやワインに共通する泡や、日本の象徴の日の丸などの意味が込められていたんですね!写真もとても綺麗だったので、プロの方が撮っているのかと思いました。最後に、伝えたい事やメッセージをお願いいたします。
春香:ワインにはまることで、人生は豊かになると思います。はまると楽しい底なし沼です(笑)。思ったより難しくないですし、面白い世界なのでぜひ足を踏み入れてほしいですね。
ーワイン造りはもちろんのこと、ラベルや写真などにもこだわり、飲む人のことを想って毎年のように進化されているのが伝わってきました。さらに足利学校という珍しい取り組みも行っているCfa Backyard Winery。今後もますます、人気になりそうですね!増子敬公さん、春香さん、本日はありがとうございました。
Cfa Backyard Winery
電話番号:0284-72-4047
FAX:0284-72-8284
営業時間:平日8:00〜17:00
Web:http://winemaker.jp/
企画:ワインワークス南青山、酒小町
場所提供:ワインワークス南青山
聞き手:伊藤美咲、卯月りん
テキスト:伊藤美咲
編集:金子摩耶
撮影:中嶋桃子