日本酒から”いい香り”がする理由。成分や種類、表現の仕方も紹介

日本には1500を超える酒蔵がありますが、日本酒の香りは造られる銘柄によって多種多様です。

果物のようなフルーティーな香りもあれば、原料のお米のふくよかな香り、数種のスパイスをかけあわせたような複雑な香りなど、挙げればきりがありません。

そこでこの記事では、

・日本酒の香りにはどんなバリエーションがあるのか

・日本酒の香りの表現方法

・なぜ果汁を加えていないのにフルーティーな香りがするのか

・どんな香り成分があり、どのようにしてそれが生まれるのか

などについてわかりやすく解説していきます。

日本酒の香りのバリエーションと表現の仕方

日本酒 香り

まず見て頂きたいのが下の表。日本酒の香りの種類についてまとめたものです。

日本酒の香りの分類には色んな切り口がありますが、まずは直感的に理解できる「よく知られた食品での例え」と「形容詞での表現」を掲載しています(成分や専門的な分類については後述)。

この表を見れば、日本酒の香りのバリエーションについての全体像が把握できると思います。

加えて、実際に飲んだ日本酒の香りを表現するときの便利な用語集としても使えます。

表. 日本酒の香りのバリエーション

形容詞での表現食品での例えより具体的な例え
・華やか
・フルーティー
・爽やか
・清涼
・みずみずしい
果実類りんご、メロン、バナナ、マスカット、白桃、ライチ、みかん、レモン、ライム、柚子、梅
花類梅、アカシア、ユリ、ラベンダー、バラ、キンモクセイ
香草類レモングラス、ヨモギ、ミント、バジル、ローズマリー
・ふくよか
・ふくらみ
・まろやか
穀物類米、米麹、藁、稲穂、もち
乳製品バター、生クリーム、カスタード、クリーム、ヨーグルト、チーズ
・力強い
・複雑
・個性的
・凝縮感
糖蜜・ドライ果実黒糖、黒蜜、カラメル、メープルシロップ、蜂蜜、レーズン、干しいちじく、干し杏
ナッツ・スパイス類カシューナッツ、アーモンド、松の実、胡椒、山椒、シナモン、クローブ、アニス
その他醤油、味噌、お茶
参考文献:『新訂 日本酒の基 日本酒の基礎知識*』の日本酒の香りの用語集より一部を抜粋・編集して掲載

香りの感じ方は主観的なものですので一般化が難しいですが、上の表はできるだけ客観性を担保するために唎酒師育成の教材『新訂 日本酒の基 日本酒の基礎知識』の分類を採用しています。

色んな香りが生まれる理由 〜香りの種類と成分〜

さて、上の表を見ていると次のような疑問をもたれる方もいるかと思います。

・なぜ同じ日本酒なのにこんなに色んな香りのものがあるのか?
・なぜ果汁や香料を使っていないのにフルーツのような香りがするのか?

この疑問に答えるために、日本酒の香りについてもう少し深堀りしていきましょう。
日本酒の香りは、その香りが何に由来するかによって次の3つに分けられます*2。

①吟醸香 、②原料香、③熟成香

吟醸香

吟醸香 香り

吟醸香とは、吟醸酒の特徴的な「果実や花のような香り」のこと。

吟醸香の香気成分は原料となるお米の成分をもとに酵母がつくりだします。とくに吟醸酒ならではの造り方(精米歩合60%以下に米を削る、低温長期発酵など)をしたときに多く生成されるのが特徴です。

低温で発酵することで、できた香りが揮発しにくいのも吟醸造りで吟醸香が発現しやすい理由の1つです。また、使う酵母の種類によってつくられる香りの種類も変わってきます。

ちなみに、最初に掲載した表の「華やか、フルーティー……」の行に対応するのがこの吟醸香になります。

表. 吟醸香の表現方法(例)

形容詞での表現食品での例えより具体的な例え
・華やか
・フルーティー
・爽やか
・清涼
・みずみずしい
果実類りんご、メロン、バナナ、マスカット、白桃、ライチ、みかん、レモン、ライム、柚子、梅
花類梅、アカシア、ユリ、ラベンダー、バラ、キンモクセイ
香草類レモングラス、ヨモギ、ミント、バジル、ローズマリー

そして、この吟醸香の代表的な成分が「カプロン酸エチル」と「酢酸イソアミル」です。

カプロン酸エチル

リンゴや洋梨など、みずみずしい甘みと酸味をもった果実に例えられる成分です。この成分を多く生産する酵母(きょうかい1801号やM310酵母など)が育種されたことで、近年では吟醸香の中心的な成分に。

全国新酒鑑評会でもカプロン酸エチルの多い酒が評価される傾向にあります*2*3。

酒米の選定、高精白米の使用で原料中のタンパク質を少なくした場合や、低温で発酵させた場合に多く生成されます*2。

酢酸イソアミル

バナナやメロンなど濃厚な甘味を持った果実に例えられる香気成分。ラベルに「きょうかい9号」「きょうかい14号」などの酵母の名前が書いてあればこの香りが強いと推測できます。

この香りを強くするには、脂質が多い米の表面をより多く削る事が必要です。また、原料米を蒸す工程でも脂質が揮散するため*4、蒸し時間でこの香りをコントロールすることができるとされています*3。

原料香

原料香 香り

原料香とは原料である米や米麹に由来する香り。

よく削られた精米歩合の低い米ではこの香りは弱くなります(脱線しますが、この事も吟醸酒で吟醸香が引き立つことに一役買っています)。また、麹に由来する香りは、新酒のときに感じやすいのが特徴です。

この他、製造で使用する乳酸菌または乳酸に由来した乳製品のような香りが感じられることもあります。

最初に掲載した表の「ふくよか、ふくらみ……」の行に対応するのがこの原料香です。

表. 原料香の表現方法(例)

形容詞での表現食品での例えより具体的な例え
・ふくよか
・ふくらみ
・まろやか
穀物類米、米麹、藁、稲穂、もち
乳製品バター、生クリーム、カスタードクリーム、ヨーグルト、チーズ

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熟成香

熟成香 香り

熟成香とは保管中の時間経過による成分の変化で生じる香り。

主な成分は、日本酒のアミノ酸と糖のメイラード反応によって生じるソトロンとされています*2。

特徴はカラメル、黒糖のような甘い香りで、高濃度ではスパイスの様とも評されます。

香りを表現する「力強い、複雑……」の行に対応するのがこの熟成香です。

表. 熟成香の表現方法(例)

形容詞での表現食品での例えより具体的な例え
・力強い
・複雑
・個性的
・凝縮感
糖蜜・ドライ果実黒糖、黒蜜、カラメル、メープルシロップ、蜂蜜、レーズン、干しいちじく、干し杏
ナッツ・スパイス類カシューナッツ、アーモンド、松の実、胡椒、山椒、シナモン、クローブ、アニス
その他醤油、味噌、お茶

一方、保管中に生じる変化の中でも、意図せず生じた消費者に好ましくない劣化臭を老香(ひねか)といいます。

例えば、ポリスルフィドなどは漬物のような臭いのする老香の原因物質です。

熟成と老化を分ける条件は複雑でまだわからない事も多いですが、保管中の紫外線や熱などは日本酒の劣化の原因になる事がわかっています*2。

参考文献
*1 国税庁 令和4年3月レポート
*2 『日本酒の基 日本酒の基礎知識 』日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(著)
*3 Tips for B・F・D 清酒のにおい・かおりとその由来(その1) 宇都宮 仁 (日本酒造組合中央会理事 )
*4 灘酒研究会 用語集
*5 「清酒酵母の香気生成の研究」生物工学会誌 89巻12号

本記事は日本初、日本酒専門の体験促進型WEBサービス『SYULIP』に、酒小町が寄稿した記事を転載しています。

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執筆:べーさん(Twitter
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