学生から見た日本酒の世界 卒業制作インタビューvol.1

#sake

今年の頭から現在にかけ、中国武漢発祥のウイルス「コロナ」が日本でも猛威を奮っています。コロナの影響は、企業だけでなく学生達にも及び、政府の休校要請により卒業式や卒業制作展示会が中止になってしまうことも。

今回は、ツイッター上で大きなムーブメントを起こした、桑沢デザイン研究所の学生たちのなかから日本酒にゆかり深い、日本酒にまつわる素敵な作品を見つけたので、制作者インタビューとともにご紹介いたします。

清らかな雪解け水が滴り落ちる、美しい波紋を象る「ゆきひえ」

こちらの透き通る雪解け水のような、美しい作品を制作したのは、専門学校 桑沢デザイン研究所の学生である水野そよかさん。
在学中は総合デザイン科を専攻し、ビジュアルデザインについて学んでいました。

酒小町では、そんな水野さんに卒業制作の作品への想いや、日本酒に対する印象をインタビューしていきます。

Q1.「ゆきひえ」という作品について教えてください

「ゆきひえ」とは架空の日本酒であり、新潟で造られた純米酒を想定しています。
販売を想定したパッケージとして、お猪口・徳利・皿の3点セットの酒器から構成しました。

「ゆきひえ」という名前には、2つの由来があります。1つ目は「雪中貯蔵」という雪の中で日本酒を熟成させる方法から、2つ目は冷酒の呼び方の1つである「※雪冷え」から取りました。

(※日本酒は温度によって、飲み方の名前が変わります。
冷酒は「雪冷え」の他にも「花冷え」「涼冷え」と呼ばれる温度での飲み方があります。)

冷酒の中でも、「雪冷え」は一番低い温度での飲み方です。
「ゆきひえ」は、キンキンに冷やして飲んでもらいたい、というイメージがあったので、ぴったりな名前だと思いました。

なお、この作品はお猪口と徳利、お皿が1セットになっているため、日本酒を飲み終えた後でも、食器として利用することができます。また、ひとつに重ねて、オブジェとして飾っておきたくなるようなデザインも目指しました。

Q2.「新潟県十日町市」に焦点を当てた理由を教えてください

卒展を制作するにあたり、ゼミ全体で制作コンセプトが決まっていたのですが、私のゼミは「美しいをデザインする」でした。

美しいとは何かを考えた時、幼い頃から見てきた十日町市の冬景色が浮かびました。私は十日町市に住んだことはありませんが、十日町は生まれた場所であり、祖父母の家があるため、幼い頃から何度も遊びに行っていました。

寒い冬には雪が降り、人の背を軽く飛び越える高さまで雪が積もります。冬の終わり、やっと春が近づく頃、寒い中にもあたたかい陽が差すようになり、少しずつ雪が溶けていきます。その雪解け水が、やがて田に行き届き、いのちが生まれる。

その流れと、景色を本当に美しいと思っていたことが作品を作るきっかけとなりました。

Q3.「ゆきひえ」はとても美しい作品ですが、デザインについて教えてください。

「ゆきひえ」のデザインのテーマは「波紋」です。

屋根から伸びた氷柱(つらら)から、ポタポタと落ちる水滴によってできる「波紋」や、手間をかけて丁寧に醸造した日本酒が、少しずつポタポタと滴り落ちてできる「波紋」をイメージしました。

桑沢デザイン研究所では、1年生の時にビジュアルデザイン、プロダクトデザイン、スペースデザイン、ファッションデザインという、4つの分野を必ず勉強します。

私はパッケージデザインのゼミに所属していたのですが、グラフィックやビジュアルなど「美しい外装的なデザイン」より、入れ物自体の「形の美しさ」を追求する勉強をしていました。

最終的にビジュアルデザインを専攻しましたが、プロダクトデザインの「機能的なことをデザインする」分野にも興味があり、「ただ見た目が美しいだけのパッケージ」を作るのは避けたいと思っていました。そのため卒業制作の構想を考えた時、ビジュアルを考える前に「どんな日本酒のパッケージがあれば便利だろう」という機能的なところから考え始めました。

「お酒を買って、その場で飲めたら便利だな」「使い捨てじゃなくて、飲み終えた後も再利用できたら素敵だな」というアイディアを元に、じゃあどういう形にすれいいかを考えて制作を進めていきました。

Q4.制作する上で力を入れたことを教えてください

私の在籍しているゼミは「全てを自分で作る」ことが前提条件にありました。
他のゼミの人達はアイデアとデザインは自分で考えますが、実際に形にしていく作業は専門の業者に頼んだりしています。私たちはアイデアとデザインをしたら、自分自身で作り出さなければならず、もちろんやったことの無い作業ばかりだったので、失敗ばかりでした。

簡単に制作過程を説明すると、まず「原型」となる形を油土や石膏などで作ります。「原型」ができたらスチレンボード等で箱を作り、その中に原型を入れ固定します。次はその箱の中に、ゆっくりとシリコンを流し込み「型」を制作します。1日置いて固まった「型」にエポキシ樹脂を流し、固めると「原型」と同じものが透明になって出来上がります。

そこで終わりではなく、紙やすりを目の粗い80番から2000番までかけ、コンパウンドという更に粒子の細かい研磨剤3種類をかけて、やっとピカピカになります。この「やする」という過程が1番大変で時間がかかり苦労しました。

Q5.「ゆひきえ」で実際に日本酒を飲んでみましたか?

「ゆきひえ」は作られている材質の問題とスプレー塗料が付着していることもあり、実際に使うことはできませんでした。

また、実は私自身、日本酒を飲んだことがほとんどありません。同年代の人で日本酒が好きと言っている人も少なく、飲みの席で飲んでいる人を見たことがないくらいです。

日本酒を好むのは60歳以上の方というイメージがとても強いです。
こういったイメージからも、私のように日本酒をあまり飲まない人たちに、日本酒に興味を持ってもらえるような新しいパッケージの提案をしたいと思い、制作をしました。

Q6.卒業制作の展示情報など

この春の卒業制作展は中止になってしまいましたが、東京2箇所、新潟1箇所で作品を展示します。

■3/24-25日 「ph7+(ピアッカセッテ)」
表参道キャットストリート婦人靴ブランド

〒150-0001
渋谷区神宮前5-17-20ティスモ原宿4F

■3/28-4/26 Attachement(アタッシュマン)
代官山・恵比寿エリアにあるエストニア雑貨店

〒150-0021
東京都渋谷区恵比寿西1丁目29−8 ITO恵比寿ビル2F)

※ 不定休のため営業日についてはInstagramをご確認ください。
https://www.instagram.com/attachementebisu/

■5月未定 FACTORY FRONT
新潟県のセレクトショップ

〒959-1289
新潟県燕市東太田14-3

 

なお、学校の方で夏頃に改めて卒業制作展に代わる何かを検討していると発表があったため、夏にも一般の方に見ていただける機会があると思います。ぜひ作品を見にきてもらいたいです!

またArtStickerというサイトで作品を公開しましたので、こちらも見ていただけると嬉しいです。
( ArtSticker:https://artsticker.app/share/works/detail/11681 )

Q7.今後の進路について教えてください

卒業後は工芸やアートの道ではなく、デザイン会社に就職します。

今回卒業制作をしたことで、設計や原型を手で作ること、シリコンや樹脂などの素材の難しさ、やすり・磨き作業が大変なことなど、機械で何でも簡単に作れてしまう時代に、手作業でものづくりをする大切さを学ぶことができました。

就職して直接のものづくりと離れることになっても、その経験と気持ちを忘れずにクリエイティブな現場で活かしていきたいです。

作品画像

作者プロフィール

水野そよか
専門学校桑沢デザイン研究所
総合デザイン科ビジュアルデザイン専攻  伊藤透ゼミ

1999年生まれ。新潟生まれ神奈川育ち。現在桑沢デザイン研究所に在籍中。
伊藤透ゼミにてパッケージデザインを学ぶ。

SNS:Twitter @rikka_infinity

 

ライター:ごまちゃん
写真撮影:製作者 水野そよか

ごまちゃん

野菜ソムリエ・日本酒ナビゲーター 両親の影響で、自らも大のお酒好き。主人との晩酌が毎日の楽しみで、旅先でも一緒に地酒を味わうのが恒例に。アートや建築が好きで...

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