【山口・岩国酒蔵見学その1】『五橋』雁木』をめぐる旅

2025年3月上旬、山口県岩国市に酒蔵見学に行ってきました。
今回うかがったのは、岩国空港・岩国駅からもアクセスのよい『五橋』を醸す酒井酒造さんと『雁木』を醸す八百新酒造さんです。
どちらも一般開放されていませんが、今回は特別に見学させていただきました!
いつも飲んでいるお酒が、どんな場所でどうつくられているのか、それぞれの蔵を見せていただきながら、酒造りへの思いや特長をたっぷりとうかがってきました。読んだらきっとお酒がよりおいしくなる、岩国の魅力をお届けします!
岩国駅からバスと徒歩で酒井酒造へ

岩国駅から2㎞少し、バスと徒歩で15分ほどの場所にあるのが『五橋』の醸造元・酒井酒造さんです。杜氏の森重さん、総杜氏の仲間さんに案内していただきました。

米・水・人にこだわる岩国の酒『五橋』の製造工程を見学!

こだわりのひとつは、水です。川に挟まれた三角州の内側に蔵があるため、水が豊かで綺麗なのが特長。硬度1.6の超軟水を、井戸から汲み上げて仕込みに使っているそうです。蔵からは山と川が一望できます。
使うお米はすべて地元・山口県産米。平成8年から山田錦の契約栽培を始め、平成27年からは農業法人を立ち上げ、社員自ら米作りをおこなっています。
年によってできたお米に適したお酒に使うため、味のブレが少ないというメリットもあるそうです。


この日は、蔵にうかがったときにちょうど米が蒸しあがって冷ましているところでした。
メンバー一同興味深かったのは、米を運びながら麹を吹き付けるこちらの機械。

以下の写真の麹室の中で手作業で麹をつくることもあれば、機械をつかって効率的に作業することもあるのだと知りました。少数精鋭で酒造りを行う工夫なのですね。



たくさん並ぶタンクに入っているのは、仕込み中の『五橋』です。ぷくぷくと発酵している様子が、とても愛おしいですね。木桶もありました。


中には、酒小町メンバーの渡邉が愛してやまない『BLUE』が入っているのを知り、思わず笑顔。
このあと「ヤブタ」と呼ばれる自動圧搾ろ過機で搾り、瓶詰・火入れをして出荷されます。搾ったあとの酒粕もありました。



たくさんお話をうかがってから味わった、できたての『五橋』は本当においしかったです。
総杜氏の仲間さんによると「五橋のこだわりは、米と水と人」とのこと。
米は前述の通りですが、山口県大津郡の「大津杜氏」をはじめ、蔵で働く全員が山口県出身だそうです。地元の方だからこそ、地元のおいしいお料理にぴったりのお酒がつくれるのだと、とても納得しました。
お酒にまつわる豆知識「箍が外れる」の「箍(タガ)」って?

見学中にひとつ知った豆知識。それは「箍(タガ)がはずれる」の「タガ」というのは、酒を醸す樽を締めるために竹を割って編んでつくったもので、タンクの下部分をぎゅっと締めているこれです。
言葉で聞いたことはあっても初めて見るメンバーたち。「へぇ~!」が止まりませんでした。
蔵の直売所でお土産の購入もできます!

蔵ではお酒やグッズも販売しているため、宿で飲むお酒を購入しました。
見学した発酵中のお酒が、私たちのもとに届くのが一層楽しみです。
仲間さん、森重さん、酒井酒造のみなさん、ありがとうございました!
八百新酒造で『雁木』のおいしさの秘密を探る
酒井酒造さんをあとにした一同は岩国駅方面へ。歩いて1㎞ほどの、今津川という川を渡った場所にあります。
「雁木まであと100m」と書かれた大きなタンクが!

矢印に沿って進むと見えてくる杉玉とレトロでお洒落な建物。こちらが『八百新酒造』さんです。


代表銘柄『雁木』の由来は船着き場だった
「雁木」というのは、船着き場の階段状の桟橋のことで、雁が斜めに並んで飛ぶ様子が階段の形に見えるため「雁木」と呼ぶのだそう。八百新酒造さんの前を流れる今津川にもありました。

案内してくださったのは常務の小林さんです。
昔この場は岩国藩の米蔵であったので米を水揚げするための「雁木」があり、一方杜氏や蔵人は海からやってきて「雁木」から上陸していました。
「船着き場の雁木があったからこそ蔵があり、蔵があったからこそいまの『雁木』というお酒がある」という小林さんの言葉が印象的でした。
2018年に増築・増強した設備で酒造りを開始
八百新酒造さんでは平面での酒造りをしていましたが、2018年に増築して、いまの体制でお酒を醸しています。
米を洗米・浸漬し、蒸す場所であるこちらの「釜場」や、麹室、搾りの機械などを増強しました。

洗米は10㎏単位の少量ずつ行い厳密に浸漬時間を管理し、遠心分離で脱水した後再度計量。徹底的に理想の吸水率を追求するための手間ひまを惜しみません。

1トン以上の米を蒸せる甑(こしき)もありました。

麹はすべて手作業で、木製の箱の中で麹をつくる伝統的な手法でおこなわれます。


休日は麹室を密閉し、オゾンガスを充満させて殺菌。衛生面でも徹底的に管理しているのですね。

発酵中のタンクの中も見せていただきました。酒母は普通速醸で2週間かけて作るとのこと。おいしいお酒になりますように。


八百新酒造さんもヤブタ式で搾り、その後機械を通じ減圧されて詰められます。
検定タンクに入れるときにこの4本の金属パイプを通すと、おり引きと呼ばれる工程が必要ありません。
(おりとは、もろみを搾ったあとの微生物などのこと)

『雁木』ブランドのこだわりは、無濾過かつ純米酒であること

2000年に産まれた『雁木』ブランド。
炭素濾過をするとお酒の個性を無にしてしまうから、あえて無濾過・純米酒にこだわっているのだそうです。酒造りへの誠実な姿勢がそのまま表れていると感じました。

最後に社長にもお会いでき、一緒に写真を撮っていただきました。
小林常務、社長、そして蔵のみなさま、ありがとうございました!
角打ち&お土産購入は岩国駅前の『みつかんや』へ

岩国の夜は、ぜひ駅前の『みつかんや』さんへ。朝10時から、1杯から角打ちを楽しむことができ、ボトルで購入して店内で味わえるのも魅力です。

『五橋』雁木』『獺祭』に加え、岩国エリア以外の山口地酒である『貴』や『天美』など幅広い銘柄が揃っています。中には地元限定の銘柄もありました。
店員さんも気さくでとても素敵な店なので、ぜひ足を運んでみてくださいね。
みつかんやの店員さんと、八百新酒造の小林さんと記念撮影!

お店情報:みつかんや
住所:〒740-0018山口県岩国市麻里布町1‐3-15
電話:0827-21-4261
営業時間:【月−土】 10:00-20:00 【日・祝 】10:00-19:00
Instagram:@mitsukanya_※営業時間などについてはInstagramをご確認ください。
【後編予告】岩国地酒の魅力を堪能!続いては『獺祭』を醸す旭酒造へ

2つの蔵それぞれで設備も雰囲気も異なりましたが、共通して感じたのは、岩国の特長を活かし、手作業を大切に醸されているということです。お話を聞いてから飲むそれぞれのお酒は格別でした。
次回は岩国の獺越にある旭酒造さんに見学に行ってきた様子をリポートします。
それではまた次回、お会いしましょう!
過去の酒蔵見学レポート
酒小町では、過去にもいくつかの酒蔵へ遊びにいきました。ぜひ過去のレポートも合わせて読んでみてくださいね。
日本酒コミュニティ『酒小町』
20代から30代の「お酒の場と、交流が好き」な人たちが集まる日本酒コミュニティ『酒小町』。
「日本酒好きのあそび場」をコンセプトに、年齢も職業もバラバラの個性豊かなメンバーが乾杯するだけでなく、自分たちであそびを企画したり、日本酒について学んだり……誰もがホッと一息ついて自分らしくたのしめるようなサードプレイスをつくっています。
『酒小町』は、毎月1日〜10日の期間にメンバー募集をしています。募集開始時にはLINEアカウントでお知らせをしているので、ぜひ登録して続報をお待ちください!
今回訪問した酒蔵
酒井酒造株式会社
住所:〒740-0027 山口県岩国市中津町1‐1−31
電話:0827-21-2177
HP:https://gokyo-sake.co.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/sakaishuzo
X:@sakaisyuzo
Instagram: @sakaisyuzo
八百新酒造株式会社
住所:山口県岩国市今津町3-18-9
電話:0827‐21‐3185
HP:https://yaoshin.co.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/yaoshinshuzou
Instagram:@gangi_yaoshinshuzou
※いずれも一般の方の見学は受け付けていません
酒小町制作メンバー
執筆:石川 奈津紀(X / Instagram)
編集:福島未貴(X / note)
企画:石川 奈津紀、渡邉 真菜(X / Instagram)