『酛すり』って何?生酛造りだけで行われる昔ながらの日本酒造りを紹介
一年を通して楽しめる日本酒。
現在は年中日本酒を造っている酒蔵もありますが、主な日本酒造りの時期は11月~3月の寒い時期です。
今回は、日本酒の中でも歴史の長い『生酛造り』の工程のひとつである『酛すり』について紹介します。
酛すりとは
https://www.daishichi.com/waza/kimoto.html
『酛すり(もとすり)』は、日本酒のもととなる酵母を育てるための工程のひとつで、別名『山卸し(やまおろし)』と呼ばれています。
酛すりを行うのは生酛造りの日本酒だけです。
手間がかかる作業なため、現在は酛すりを行わない日本酒が増えています。
作業内容
酛すりは、蒸し米・麹・水を均一に混ぜたものを、蕪櫂(かぶらがい)という木の道具ですりつぶす作業を指します。
この作業を行うことで、自然界にいる乳酸菌が発生しやすい環境を作り、酵母を増殖させています。
1番櫂、2番櫂、3番櫂と3回に分けて作業を行い、粒状の蒸し米を最終的にはペースト状にします。
酛すりを行う際は、蒸し米・麹・水を均一に混ぜたものを桶に分け入れ、1つの桶に対して1~3名程度で作業を行います。(蔵によって桶のサイズや作業人数は異なります)
すり潰す作業はそれぞれ3~10分程度ですが、1番櫂は蒸し米の状態からスタートするので、かなりの重労働となります。
また、全ての桶の状態が同じになるように、作業を行う際は全員で息をあわせ、同じタイミングで蕪櫂を動かします。
重労働な作業の中、全員でタイミングを合わせるために、酛すり唄(もとすりうた)を歌いながら作業することもあります。
作業環境
酵母を元気な状態に保つため、温度を厳密に管理しながら作業が行われます。
温度を下げるために冷気を利用することから、厳寒期の深夜に作業を行うこともあります。
酵母は温度に敏感であり、温度管理を行わないと不要な酵母が増えてしまうなど、発酵に悪影響を及ぼす可能性があるため、良い日本酒を作るためにも温度管理は徹底されています。
実際の作業風景
仙禽さんが紹介してくれていた、今年の酛すりの様子を見てみましょう。
初めは粒感のある蒸し米が、3回の工程を経てヨーグルトのようになめらかな状態に変化しています。
酛すりを行うことで、自然の力を借りながらじっくりと力強い優良な酵母を育むことが出来るため、香りや旨味を長く楽しめる日本酒造りが可能になります。
まとめ
なかなか知ることの無い日本酒造り。
近年は技術の発達により工場での生産も可能になっていますが、昔ながらの造り方で手間暇をかけて生産している酒蔵さんが多いのも事実です。
日本酒は奥が深く、自然の力・微生物の力によって味が変化するため、同じ環境で造っていても全てが同じ味になることはありません。
そんな繊細な日本酒を、よりおいしい状態で楽しんでいただくために、酒蔵さんたちは日々研究を重ねています。
TwitterやInstagramで日本酒造りの様子をアップしている酒蔵さんは多いので、気になる方はぜひ覗いてみてくださいね。
本記事は、飲む人にとってのお酒情報サイト『アルコールパラダイス』に、酒小町が寄稿した記事を転載しています。
企画協力
アルコールパラダイス
飲む人にとってのお酒情報サイト
Web:https://alc-paradise.com/
酒小町制作メンバー
執筆:Ami Onodera
「日本酒を、もっと身近に」をコンセプトにした日本酒メディア&コミュニティ「酒小町」の編集部です。 メンバーは20代から30代。
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